下野新聞県北日光版に掲載されました。
【大田原】江戸時代に創業し2015年に廃業した佐久山の旧島崎酒造で、酒蔵の改修工事が進んでいる。大正期に建てられた新蔵は、屋根に穴が開くなど老朽化が目立っていた。後を継げず7代目となっていた島崎一さん(65)が「親元を離れ実家に戻らず、ふるさとや先祖に不義理をした」と悔い、せめて当時の姿に戻し残そうと決めた。工事を見守りながら、地域のため酒造跡を活用したいとの思いを強くしている。
(横松敏史)
廃業の酒蔵を改修
「残したい」思い込め
1781年に近江商人だった初代が、奥州道中の宿場町としてにぎわった佐久山で酒造業を始めた。「友白髪」などの銘柄があり、南部杜氏10人ほど冬から春先にかけ、出稼ぎに来ていた時代もあった。しかし売り上げの減少などもあり、廃業に至った。
7月下旬に工事が始まった酒蔵は1923年に建設された。
床面積は学校の25mプールが入るほどの大きさ。
木造2階建てだが、高さは約14メートルに及ぶ。老朽化は顕著で東日本大震災では外壁の一部がはがれた。
「この家をどうするのかと、親も考えていたはずだが、お互いに後継の話題は避けていた」と島崎さんは後悔を口にする。
両親がなくなり、そんな思いを抱える中で、酒蔵を解体するのではなく、改修することを選んだ。
いくつかの業者には断られたが阿久津左官店が工事を引き受けてくれた。
「文化財的な価値もある。壊してしまうのはもったいない」と意気込み、
来年の1月の完了を目指して工事を進めている。
酒造跡には明治期の酒蔵や店舗住居、大正期の離れや石蔵、煙突なども残る。
島崎さんは佐久山の歴史を振り返ったり、懐かしんだり、学んだりする機会になると見据えており、
「地域の活性化につながるよう利用の仕方を考えていきたい」と話した。
📰 出典:2025年9月2日付 下野新聞 県北・日光版