佐久山酒蔵プロジェクトについて、日刊建設新聞に掲載されました
伝統的技法で酒蔵再生
旧島崎酒造の酒蔵再生
左官業者が総元請として挑んだ、築100年の酒蔵再生プロジェクト
栃木県大田原市佐久山にある「旧島崎酒造(屋号・日野屋)」の酒蔵再生について、日刊建設新聞に掲載されました。
この酒蔵は築100年を超える歴史ある建物ですが、長年使われない状態が続き、屋根が抜け落ち、外壁の漆喰も広い範囲で剥がれ、柱の腐食も進むなど、倒壊の危険がある厳しい状況にありました。
そうした中で阿久津左官店は、左官工事会社でありながら総元請として工事全体を担い、瓦職人や大工、架設業者、測量業者など多職種と連携しながら、酒蔵を次世代へつなぐための再生工事に取り組みました。
工事概要
今回の工事は、旧島崎酒造の屋根瓦・外壁漆喰の改修を中心とした外装再生です。
- 対象:旧島崎酒造(屋号・日野屋)酒蔵
- 所在地:栃木県大田原市佐久山
- 築年数:約100年
- 工事内容:屋根瓦・外壁漆喰の改修
- 工事体制:阿久津左官店が総元請として全体を統括
- 外装完了:2026年1月末
島崎酒造は江戸時代創業の酒蔵で、「友白髪」などの銘柄を製造していましたが、2015年に廃業。その後、建物は長く放置され、屋根瓦の崩れや外壁漆喰の剥落が進み、傷みが著しくなっていました。
解体ではなく改修によって残したいという想いがありながらも、建物の状態が厳しく、引き受け手が見つからない状況の中で、阿久津左官店が工事を担うことになりました。
総元請としての取り組み
改修の可能性を見極めた現地確認と提案
建物の状態は非常に厳しく、満身創痍ともいえる状況でした。
そのため、まずは現地を丁寧に確認し、どのような手順なら建物を残せるのか、改修の可能性を多角的に検討しました。
建物の傷みがさらに進行する前に着手する必要があると判断し、早急に工事体制を整えながら計画を進めていきました。
多職種を束ねた工事体制の構築
今回の現場は、左官だけで完結する工事ではありません。
瓦、大工、足場、測量など、複数の専門職の連携が必要となるため、阿久津左官店が総元請として周辺地域の職人や協力業者を集め、工事全体を統括しました。
2025年7月に着工し、まずはドローンによる三次元測量を実施。倒壊の危険がある建物の全体状況を把握し、屋根や外壁の崩れによる雨水の侵入、さらに内部の柱や梁の傷みまで確認したうえで、最短かつ最適な工程を組み立てました。
建物の寿命を左右する「雨仕舞」を重視
今回の再生で特に重要だったのが、建物の寿命を左右する雨仕舞です。
表面だけを直しても、雨水の侵入を防げなければ建物は長く持ちません。
そこで、古い瓦を降ろして下地の腐食箇所を補修し、葺き直しを行いました。
その過程では、屋根瓦職人と左官職人が緊密に連携し、水の流れを意識しながら納まりを丁寧に整え、建物全体を守る外装へと仕上げていきました。
漆喰壁の再生
外壁では、剥がれ落ちた古い漆喰を除去し、竹小舞を補修したうえで荒壁を付け直し、伝統的な技法で白壁を再生しました。
見た目を整えるだけではなく、下地からしっかり手を入れ、建物本来の姿を取り戻していく工事です。足場が外れると、美しい白壁がよみがえり、長く傷みが進んでいた酒蔵に再び凛とした表情が戻りました。
また今回の現場では、地域住民や近隣小学校の児童を含む延べ600人もの見学者を受け入れました。
さらに、伝統左官技術研究所を立ち上げ、蔵修復に精通した左官職人を招いた講習会も開催するなど、再生の現場そのものが左官技術の価値を伝える場にもなりました。
外装改修の完了
2026年1月末、屋根瓦と外壁の改修工事は無事に完了しました。
屋根が抜け落ち、壁が崩れ、倒壊の危険もあった酒蔵は、外装の再生によって再び雨風をしのげる建物へとよみがえりました。
さらに、2026年3月8日には酒蔵を活用したマルシェも開催され、長く静かだった場所に再びにぎわいが戻っています。
今回の工事は、単なる修理ではなく、地域に残る歴史的な建物を未来へつなぐための第一歩となりました。阿久津左官店はこれからも、左官という仕事を通して建物の価値を守り、地域の風景と記憶を受け継ぐ取り組みを続けてまいります。
掲載情報
📰 出典:日刊建設新聞
