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はじめに

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那須塩原に根付き50年 左官の技と心継承と革新の軌跡

家業への宿命と試練 画像

家業への宿命と試練

壁の匠 阿久津左官店は、1972年に創業。現代表 阿久津 一志の父、先代が創業した左官工事業に始まる。

代表阿久津は、地元工業高校卒業後、家業ではなくゼネコンに入社し、橋梁や大型建築構造物の設計作図に携わっていた。この選択の背景には、若き日に父の仕事を手伝う中で体力的な厳しさを知った経験があった。しかし、父が病に倒れたことをきっかけに家業を継ぐ使命感を持ち、阿久津左官店に入社。

職場は年上の職人ばかりの中、6年間の修業を経て、一級左官技能士の資格を取得。2000年に阿久津左官店の代表取締役となる。

古い慣習を断ち切り理念の確立と組織改革 画像

古い慣習を断ち切り理念の確立と組織改革

代表阿久津はゼネコンで培った設計の知識や材料・施工方法の知識を活かした営業や商談にこそ、力量を発揮できると確信していた。

しかし当時、左官職人の現場での礼儀・行儀・作法が大きな課題であった。かつての一人親方制度の名残から社員教育が行き届いておらず、顧客からの信頼を損ねていたこの慣習を問題視。

そこで、『私たちは、礼儀・技術・知識の向上を目指し、感謝の気持ちで社会に貢献します。』という経営理念を掲げ、社員も同じ気持ちで理念を実現できるようにと組織の意識改革から進めた。

礼儀と卓越した技術を備える職人育成 画像

礼儀と卓越した技術を備える職人育成

理念を浸透させるため、代表阿久津は人材育成のため2011年経営管理学修士を取得。現場での実務教育、外部研修機関を活用し、社会人としてのマナーや経営・営業の知識を学ぶ機会を提供。

当初こそ戸惑いを生んだが、確たる信念のもと継続され、十年を経てようやくその土壌が育まれる。学ぶ気風が醸成され、教えを受けた者がまた次の者を導くという文化が根付いた。

技術だけに偏った職人ではなく、礼儀・行儀・作法、 そして深い知識と卓越した技術を兼ね備えた職人が壁の匠の強みである。

左官職人の手が、
空間に唯一無二の
物語を紡ぎ出し、
未来へと続く
新しい価値を創造する。

それは、
住まいの隅々から、
歴史を刻む
文化財の保護にまで広がり、
暮らしと文化に奥深い
豊かさをもたらすのである。

左官リノベーション 画像

左官が創り出すリノベーション空間

視覚の美にのみあらず、四季の移ろい、光の変幻と共に千変万化の相を映し出す漆喰、珪藻土の塗り壁。
人の心に静謐をもたらすは、肌に触れる石やタイルの堅確なる感触。
左官職人の手仕事が織りなす空間の再生は、内外の壁に留まることなく、日々に使う水まわりや、建物の顔たる外構にまで及び、それぞれの場所にふさわしい機能美と情緒豊かな表情を刻み込む。

壁の匠は、その左官技術を活かし、一般の住まい、別荘、旅人を迎える宿泊施設から、地域の賑わいを創る観光施設、さらには古の文化を今に伝える文化財に至るまで、広くその腕を振るう。

リノベーション空間 画像
リノベーション空間 画像
リノベーション空間 画像

また、地域の空き家再生にも力を注ぎ、「職人ビレッジ」と銘打ち、「左官しっくいギャラリー」として息を吹き返した建物も、築五十年の古き空き家を、二年の歳月をかけ再生せしものである。
地域の歴史、周囲の景観との調和を重んじ、日本家屋の本来の美質を活かし、建て替えるのではなく、左官の技をもって再生する道を選んだのだ。

新しい価値を与える。常に改良の精神を求め、3Dレーザー加工機と3Dレーザーマーカーを導入し現場で余り捨てられるはずだった素材に装飾や名前を入れ、提供する試みもまた、その一端である。

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左官職人の伝統技術で生み出す美の世界

左官の美の世界は、自然素材の奥深き魅力と、それを余すところなく引き出す職人の伝統技術との厳粛なる対話によって創造される。
素材の力を最大限に引き出すのが、永年の修練によって培われた左官職人の技である。

鏡の如く磨き上げられた「磨き仕上げ」、引きずるようにして繊細な筋目を残す「引きずり仕上げ」、あるいは様々な文様を律動的に描く「模様付け」。
一本の鏝を意のままに操り、素材と対話しながら、壁面に千差万別の表情を刻み込んでいく。
これらは全て、職人の絶妙なる力加減、鏝の角度、そして素材の乾き具合を見極める炯眼から生まれる技の結晶に他ならない。

気候や下地の状態を読み、最適なる調合と工法を選択する知識と経験。
そして何よりも、美を希求する熱き情熱と研ぎ澄まされた美的感覚。

左官職人の伝統技術 画像
左官職人の伝統技術 画像
左官職人の伝統技術 画像

壁の匠はこれら伝統の技を練磨し、次代へ継承するための環境に力を入れ、一級左官技能士試験の課題指導を行うプロや、インストラクター資格による社内研修や外部視察を通じて常に知識・技術の向上を目指している。

その結果、壁の匠の職人は、「第48回全国左官技能競技大会」で3位入賞、「第49回全国左官技能競技大会」では準優賞を受賞、「第60回技能五輪全国大会」では日本一の栄冠を勝ち取るなど、その卓越した技は広く世に知られるところとなった。

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古き良き 建造物・文化財を未来へ継承

先人たちの技術と想いを今に伝える歴史的建造物や文化財。これら貴重なる歴史的建造物を守り、未来へと継承していく上で、左官の伝統技術は不可欠なる役割を担う。

壁の匠は、栃木県大田原市にある大治5年(1130年)創建の歴史ある寺院、威徳院の140年ぶりの本堂建立においての漆喰工事から始まり、各地域の歴史的建造物の修復を手掛ける。

建造物・文化財 画像
建造物・文化財 画像
建造物・文化財 画像

まず、対象となる建造物の創建年代や様式、地域の特性などを徹底的に調査し、当時の材料や工法を科学的に分析する。これにより、土、砂、石灰、繋ぎ材となる麻や藁といったスサの種類や配合比率を特定し、可能な限り忠実に再現することを目指す。

されど、当時の材料が現代においては入手困難である場合も多く、材料調達は復元における大きな課題の一つとなる。
壁の匠では、全国の産地や専門店との連携や、修復用の材料を予め備蓄しておく取り組みを行っている。

伝統的な道具を用い、当時の工法に則り、また現代の工法も取り入れながら、一層一層丹念に復元していく。
経年変化によって生まれた風合いや色合いを、新たな材料にて違和感なく表現するには、素材に対する深き洞察力、経験と卓越した技術が不可欠となる。

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壁の匠 左官リノベーション

左官が創り出すリノベーションとは、
伝統的なる知識・技術と、
現代の工法・感性とを融合させ、
新しき価値を吹き込み、未来へと続く価値を
創造することにある。

それは、効率や規格化が優先され、
「虚飾」に流れがちな現代において、
素材の恵み、手仕事の尊厳、
そして技術の無限の可能性、
すなわち「ホンモノ」の価値を、
改めて人々の心に呼び覚ますものなのである。

リノベーションのご用命は、壁の匠へ。