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佐久山酒蔵プロジェクトについて、建材フォーラムに掲載されました

宿場町の記憶を刻む「旧酒蔵再生」の記録
~左官工事会社が総元請として挑む、旧島崎酒造の屋根・外壁改修工事~

栃木県大田原市佐久山に立つ築100年の「旧島崎酒造(屋号:日野屋)」酒蔵再生において、
私たち有限会社阿久津左官店は「総元請」として工事全体の責任を担いました。
長年の放置により屋根瓦の崩れや外壁漆喰の広範囲な剥落が進み、崩落の危険性が指摘されていた建物を、
次世代へつなぐ「再生」として取り組んだ事例です。

工事概要

  • 対象:旧島崎酒造(屋号:日野屋)酒蔵(栃木県大田原市佐久山/築100年)
  • 工事範囲:屋根瓦の改修、外壁(漆喰壁)の改修
  • 体制:阿久津左官店が総元請として多工種を統括
  • 完了:2026年1月末(外装改修完了)

総元請としての取り組み

1)事前調査と具体提案

倒壊の恐れがあることから、着手前にドローンによる上空からの空撮および測量調査を実施。
寺社の漆喰工事や文化財復元工事の経験を踏まえ、具体的な提案から工事をスタートしました。

2)構造の健全化を最優先にした全体設計

着工前は外壁の穴から雨水が浸入し、内部の柱や梁への影響が明白な状態でした。
まず仮設足場を組み、屋根から基礎に至るまで徹底的に調査を実施。
建物の「命」をどこまで残せるかの見極めから着手し、屋根(瓦)と外壁(塗り替え)を同時並行で進める工程を組みました。

3)他工種連携で高める「雨仕舞(あまじまい)」

建物の寿命を左右する「雨仕舞」を成立させるため、屋根瓦職人との連携を重視。
瓦と漆喰壁が接する箇所の納まりを鍵とし、既存土壁部分の補強には「ウルトラナノ浸透プライマー」を採用しました。

古い瓦を一度降ろし、下地の腐食箇所を徹底的に補修した上で、再利用可能な瓦と新しい瓦を選別。
瓦は一枚一枚丁寧に拭き直し、瓦職人と対話を重ねながら、
瓦のラインに合わせて漆喰を盛り、水の流れをミリ単位でコントロールする施工を行いました。

漆喰壁の再生

外壁は、剥がれ落ちた古い漆喰を除去し、竹小舞を補修して荒壁を付け直す伝統的なプロセスで再生しました。
工程の一部は Instagram「SAKUYAMA SAKAGURA」 でも随時公開しています。
仕上げ材には「栃木県産 村樫のしっくい」を用い、配合と施工タイミングを厳密に管理しながら仕上げました。

外装改修の完了

2026年1月末、屋根瓦と外壁の改修工事は無事に完了しました。
この「外装の再生」が完了したことで、建物は崩落の危機を脱し、雨風を凌げる「健全な器」としての姿を取り戻しました。
工事中には、通りを歩く地域の皆さまから「綺麗になったね」「昔の活気を思い出すよ」と声をかけていただくことも多く、大きな励みになりました。

私たちは総元請として「現場は地域の鏡である」という意識を持ち、現場を整え、美しく蘇っていく過程を地域に見ていただくことを大切にしています。
左官は単に物理的な壁を直すだけでなく、地域の風景を再構築し、人々の記憶をつなぎ止める仕事でもあると考えています。
これからも左官という技術を通じて、地域の歴史に寄り添い、未来への礎を築いていきます。

掲載情報

📰 出典:建材フォーラム No.594(2026年2月号)/特別企画「左官の可能性を広げる左官事例」